第58章

大島莉理が目を覚ますと、ベッドの上だった。鼻腔にまとわりつくような、妙に甘ったるい香り。全身がふにゃりと力を失い、大病を患った直後みたいに指一本まともに動かせない。

やっとのことで身じろぎすると、そこで違和感に気づく。服が替えられていた。赤い、やたらと艶っぽいネグリジェ――。

莉理は息を呑み、反射的に自分の身体の具合を確かめる。

……よかった。たぶん、何もされていない。

そのとき、ドアが開いた。

入ってきたのは中年の女だった。女は莉理を見るなり、手をひらひらと振る。

声は出さない。手話で何かを伝えようとしているらしい。

けれど莉理にはさっぱり分からない。必死に言葉を投げる。

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